契約が無事終わりましたら、売主は別段の取り決めがなければ決済を待つだけです。
<重要事項説明書>
買主に契約までに説明をしておかないといけないもので契約と同時に行う場合が多いです。物件に関する重要な事項が書かれている書類を業者が作成し宅地建物取引主任者が説明をする事になっています。売主は説明を受ける義務はありませんが、書面に記名押印する場合があります。
<手順>
契約の手順はまず、前項の重要事項説明書を前日までに説明を受けてなければ宅建の資格者が説明します。次に契約書の読み合わせをします。こまかい字ですが全て読みますのでその時にわかない事は遠慮なく聞きましょう。
その後に付帯設備表により何を持っていき何を置いておくかを双方が確認します。照明器具やエアコン・浴槽や便器・網戸に至るまで細かい項目がありますので勘違いや思い込みのないよう注意しましょう。
文面に問題がなければ押印します。よく実印が必要かどうか聞かれますが実印である必要はないと思います。契約時は印鑑証明を持ってくる必要がないので実印かどうかもわかりません。双方の当事者全ての押印が終わりましたら手付金を買主から貰います。場合によっては仲介業者に仲介手数料の半金も渡す場合があります。
買主に手付金の領収証を渡しましたら契約書に印紙を貼りましょう。印紙は契約書の条文に「契約書作成費用は売主買主双方が負担する」と記載されていると思いますが各々の契約証に実費で印紙を貼りましょう。貼りましたら印鑑を押して消しておきます。これで契約の手続きは終了です。時間にして1時間ぐらい必要です。
<手付金>
手付金は契約時に買主から預かる金銭です。お客様により頭金と言われる方もおられます。最初に現金にて用意しないといけない金銭なので頭金でも間違いではないと思いますが、物件購入以外に必要な諸費用も通常は現金で用意しないといけないので頭金と区別して手付金と呼びます。この手付金は慣習上は売買代金の10%にするケースが多いです。種類も現金が多いですが、銀行保証小切手でもよいと思います。しかしながら必ず売買代金の10%にする必要はありません。お客様により物件価格全額を住宅ローンにされる方もおられますし、不動産の購入にあまり現金を使いたくない方もいらっしゃいます。物件は世界に1つしかないものです。その為契約も個々の物件ごとに取り決める必要があります。まったく同じ契約も存在しないという事です。ですので手付金の額は売主と買主、つまり当事者が了解する金額であればいくらでもよいと思います。ただしあまりに少額の場合などは契約自体の拘束力に問題が生じますし逆に高額の場合は保全措置をしないといけません。
また買主から預かる手付金は買主より残代金の支払いをうけ物件を引き渡す日までできるだけ使わない方がよいです。契約の条文に記載がありますがそのまま滞りなく取引が完了すればよいのですが場合により契約が解除になる事も考えられます。そうなりますと預かっている手付金は状況により返還しないといけなくなります。
<契約解除に関する事項>
この部分は契約書の条文の中でも非常に重要です。
契約に関する内容は物件ごとに異なりますが大抵の契約書に記載されている解除に関する事項は次の通りです。
□危険負担
手付金を支払ってから物件の所有権移転の時までに台風や洪水、地震などの天災により売主や買主の責任ではない所で手付金を支払った時の状態から変化が生じた場合に適用されます。滅多にないですがないとは言えません。この条文に当てはまる事態が発生し購入後の買主の目的が達せられないと認められる場合には契約は解除され預かっている手付金は返還します。
倒壊しないで破損した場合はどうなるのでしょう。
その場合は通常は売主がその破損部分を修復しします。詳細は当事者双方が相談して決めます。もし破損した部分の修復に多額の費用がいる場合や修復しても買主の目的が達成できない場合には白紙解約になります。
購入者が建物を利用する目的で購入する場合には建物が破損すれば修復しなければなりませんし、倒壊すれば契約が白紙解約になる事が考えられます。修復できないくらい破損した場合や白紙解約の場合には手付金全額を無利息にてそのまま買主に返さないといけません。
□手付解除
気が変わったり事情が出来る事は誰にでもあります。しかしそうかと言ってすぐにやめますというのは先方に迷惑がかかってしまいます。この部分が他の商品を買う場合と不動産を買う場合の違いだと思いますが、この場合はある一定の期日までなら買主が契約を辞めたい時は支払っている手付金を売主に差し上げて辞めれます。また売主が辞めたい時は預かっている手付金を買主に返還してさらに手付金と同額を買主に差し上げて辞めれます。不動産の契約はお互いが当事者で、そのお互いが契約を最後までやり遂げる義務を負います。ですのでその義務を放棄する場合にはペナルティが課せられるという事になります。
□違約解除
違約金の額は大抵売買価格の10%または20%です。もし相手方が契約書通りに進めなかった場合にその相手に対してある程度の期日を指定して催促した上それでもしてくれない時は契約を解除して違約金を請求できます。この違約金の額は10%または20%と決まっているので、実際の損害がその金額より上であっても下であっても減額や増額を求める事ができません。
例えば上記の手付解除の期日を経過した後一方的な理由で契約をやめる時はこの違約解除になってしまいます。
□ローン特約
購入する時に買主が住宅ローンを利用する場合はこの条文が入ります。契約を結んだ後、すみやかに住宅ローンに必要な書類を用意して申込をして万が一ローンの審査が下りなかった場合には、買主の責任ではないので、ある一定の期日までであれば白紙解約になり手付金は返還され何もなかった状態に戻ります。これは買主保護の条文なので売主にとってはある意味不利なものです。注意するのは期日です。この期日を過ぎてローンの審査がおりなかった場合にはローン特約は該当せず、手付解除の期日前であれば手付解除を、その期日が過ぎていれば違約解除になります。
またすみやかにローンの書類を提出しなかったり故意に金融機関から提出を求められている書類を提出せず、ローンの審査が通らなかった場合には適用されません。以前にありましたが、買主が契約後ローンを利用する予定をしており、ローン特約を契約書に記入しました。数日後買主は占いでその物件を購入してはいけないと言われたらしく、その事を先方に言ってしまえば一方的な解約になる為手付金が取られてしまいます。なんとか手付金が戻る白紙解約にもっていきたい買主は急に金融機関から提出を求められている書類を提出しなくなりました。その後ローン特約の期限が来るのを待った結果、当然必要書類が提出されていないので審査が通っておりません。買主は期限がきたその時点でローンの審査が通っていないので白紙解約にして欲しいと申し入れがありました。
この場合は審査が通ってないというより可否自体が出ていない事になります。また必要書類の提出をしていないのでローン特約には該当しない事になります。
□譲渡承諾による解約
この条文は重要事項説明書に記載されておりますが、土地が借地の場合に地主の承諾が得られなかった場合の解約なのでほとんどの場合適用されません。
以上契約解除に関する主な条文でした。
<持ってくるもの>
契約時に必要な物は以下のものがあります。
□印鑑
当事者全員のものが必要です。特に指示がなれけば認め印でよいと思います。
□印紙代
契約証書に貼付する印紙税です。売買金額に応じて貼る印紙が決まっています。
□免許証及び健康保険証
不要のケースが多いですが携帯しておいても損はないと思います。
□権利証
必ず必要な物ではありませんが、購入者に見せる事によって安心して頂けます。
□固定資産税及び都市計画税納付書
こちらも必ず必要な書類ではありませんが、購入者が買った後、物件を所有していく維持費がいくら必要なのか知りたいところです。持参して確認してもらいましょう。
□管理規約・使用細則・総会資料等
マンションの管理に関する書類です。必ず契約時に必要なわけではありませんが、決済時には買主に渡す書類です。あらかじめ確認しておいてもらいましょう。
別段の取り決めがなければ以上になります。契約の場で慌てないように事前にチェックしましょう。
<売主・買主の時間が合わない時は?>
契約で一番よい形があるとすれば、当然売主と買主の時間があった時に契約場所に皆さんが集合しお互い当事者の顔を確認して行うのが良いでしょう。しかし皆さんそれぞれ仕事がありなかなか時間が作れない場合が少なくありません。そんな状況ではいつになっても時間が作れず契約ができません。
そういった時には「持ち回り契約」をします。正しい呼び方があるかどうかわかりませんが、私はそう言っています。
まず先に売主の都合の良い時に契約書を確認してもらい押印してもらっておきます。次に業者が買主の都合の良い日時に書類を確認してもらい押印します。手付金は仲介業者に渡し、業者発行の預り証を買主に渡します。仲介業者は手付金を売主に持っていき手付金領収証をもらいます。その領収証を買主に渡して預り証を返却してもらいます。
こうすればお互いの時間を気にする事なく契約は終了します。預り証と領収証をやり取りするので手付金の所在や責任もはっきり分かります。契約書の条文には当事者双方が記名押印した時に契約の効力が生じる旨の記載があります。つまり片方が押印しても片方が押印しなければ契約は成立しません。
<契約不適合責任>
あまり聞きなれない言葉だと思います。僕もこの仕事をするまでは聞いた事がない文言でした。購入者がその物件と出会ってから購入の意思表示をするまでの時間は高額な商品の割には短いと思います。それはその物件が世界で一つしかなく、検討している間に他に売れていまう可能性があるためです。その短い時間の間に物件の隅々まで見る事は不可能ですし、どこをどう見ていいか不動産の取引を頻繁に行っていない買主はわかりません。当然です。また場合によっては悪意の売主が早く物件を売りたいがために不利になることは買主に言わない場合なども考えられますそういった事を防ぐものに瑕疵担保責任というのがあります。建物の場合なら雨漏りや白蟻の被害、給排水管の故障、建物構造上主要な部位の木部の腐食など売主が買主に告げていて知りながら購入するのは問題ありませんが、伝えていない場合や売主が知らなかった重要な事実については買主は購入後大抵2ヶ月以内に限り売主に申し出れば責任を負わないといけないというものです。
また、上記以外でも買ってから気がついた非常に重要な部分や住む為に購入したのに住めない位の何かが出てきてそれを補修するのに多額の費用がかかる場合などは責任を負わないといけない場合があります。
ただし、マンションの場合は構造上の瑕疵などは共用部分になるので売主が直接責任を負う場合は少ないです。
<契約から決済までの時間>
契約し、手付金を受領した後決済までの時間は契約によってさまざまです。
購入者が現金にて購入される場合には別段期間をあける必要はありません。契約の時に物件価格全額が用意できる場合には一括同時決済(契約と決済を同時にしてしまう事)が可能です。しかしほとんどの購入者はローンを利用する場合が多いです。その場合は契約後購入者はローンの申込を行うので一番短い場合で2週間長い場合で1ヶ月半くらい必要になります。また、買主のローン以外でも引渡しまでに契約で取り決めていた事を解決しないといけない場合があり契約によっては半年後に決済なんてのもありました。
<引っ越し時期>
物件が居住中や利用中の場合は物件を引き渡すまでに引越ししないといけません。通常は買主から手付金を貰った後引き渡すまでに行います。買主がローンを利用する場合はその可否により白紙
になる場合があるのでローンのOKを待ってから引き渡すまでに引越しし、その後に買主に建物内部を確認してもらい問題がなければ決済に望みます。原則的に引越しした後に残金が入る形になります。契約の内容はさまざまなのでケースにより引越しする前に先に
残金を貰ってから1週間以内に引き渡す場合もあります。それは売主が買い替えの場合などで現在の住居を売却し次の住居を購入する場合に現在の住居の売却金額を次の住居の支払いにあてる時に該当します。基本的にお金を払わないと自分のものにならないので次に移る物件に残金を支払いすぐに引越しし売却物件を明け渡します。
これは契約時に決めておかないといけません。相手が了解してくれないと数日間家がない状態になってしまいます。注意しましょう。
<売却する物件に抵当権が入ってる場合>
売却しようとしている物件に抵当権が入っている場合は、物件の残代金をもらう時に同時に抹消しないといけませんので前段階での手続きが必要です。
まず、売買契約自体が問題なく決済できそうか確認しましょう。ローン特約が入っていれば万が一契約が白紙になる可能性がありますのでローンの結果が出てから債権者に連絡しましょう。ローン特約以外にも白紙解約になる条件がありますが、ほとんどが確率的に低い場合ですし、その他の解除の場合は金銭的に解決される条項が多い(手付解除や違約解除・損害賠償など)ので買手のローンをまず確認しましょう。
問題なければ早急に買主と決済日を決めましょう。あまり直近だと手続きが間に合わない場合があるのですくなくとも債権者に連絡する日から2週間以上あけて決済日を指定しましょう。
債権者は売主から連絡を受け決済日までの残りのローンの元金と利息を計算し、また物件に設定されている抵当権の抹消書類を用意してくれます。
この作業をしておかないと決済日に抵当権の抹消ができなくなり、その日に所有権を移転できない問題になってしまいますので非常に注意して下さい。
また、契約時にその物件に付随された権利を抹消してから買主に渡す内容になっている場合も同じくローンがOKになってから抹消手続きに入るようにしましょう。
以前に取引した案件で物件に抵当権が設定されており、その抹消手続きに動いたところ、すでに融資を受けた金融機関は統廃合を繰り返し某金融機関になっていました。その銀行の店舗が東京に1つしかなく抹消書類を持ち出せないと言うのです。決済日までにローンを完済すれば郵送で届けますと言われましたが決済日前日までに返済などできません。当日に買主より残金を受領し、その一部で融資額を返済して抹消書類を受け取り抵当権の抹消、所有権移転、買主の新たな抵当権設定を同日にしないといけません。
しかたがないので少々費用がかかりますが司法書士事務所の人に当日東京まで行ってもらい融資額送金した後抵当権抹消書類を受け取りすぐに戻ってきてもらいました。
<契約書は一部しか作らない時もある>
請負契約書や売買契約書は作成すると印紙税の対象になり記載金額によって印紙を貼らないといけません。ちなみに2006年現在では一千万円を超えて五千万円以下だと1万5千円の印紙が必要です。個人の場合ではまずありませんが記載金額が50億円を超えますと印紙だけで54万円も貼らないといけません。通常契約後で変更になった場合に作成する変更契約書や覚書にも印紙を貼らないといけなくなります。
契約書の条文で契約書作成費用は平分すると明記されているのが通常ですので、請負契約の場合は注文者、請負者。売買契約の場合は売主、買主用と当事者が契約書を作成すると2部必要になり印紙税が倍必要になるわけです。
ほとんどの場合2部作成しますが業者によっては1部のみ作成し印紙を貼り、コピーして印紙代を払った人が原本を持って帰り相手にはコピーを渡すという方法をする場合があります。
コピーを受け取った人は印紙代を節約できるという事です。
<白紙解約と契約解除の違い>
契約書に記載されている契約の解除に関する条項は上記で書いた通りですが、その項目の中には白紙解除または白紙解約と契約解除の2種類があります。
この二つは結局は契約は解除になり不動産売買は所有権移転まで進まずに終了する点は同じですが、大きな違いがあります。
それは白紙解約とはそう言われるように契約が白紙になる。つまり何もなくなる。何もなかった状態に戻るという意味です。法的には時間が遡り契約していない状態まで戻るといわれる事もあります。ですので何も起こらなかったという事で手付金や金銭の授受があった場合は支払った人の所に全額戻り何も罰則やペナルティがありません。契約の解除に関する項目ではローン特約や危険負担が該当します。
それに対して契約解除は契約自体は成立しておりその中で取り決められた条文に従って解除の手続きに進むという意味です。手付解除や違約解除に該当し、どちらかにペナルティがあり一定の金銭の支払い義務が生まれます。
このように解約の内容によっては区分が分かれます。仲介業者も解約の内容により間に入り処理しますがこの時も白紙解約の場合は仲介手数料等は何もなかったのですから発生しませんが、契約解除の場合は契約は成立した上での解約手続きなので契約自体が成立しているため仲介手数料の請求はされるでしょう。